アウターシムの構造やインナーシムとの違いに加え、量産発注時に確認したい精度・材質・メーカー選びのポイントを解説します。
アウターシムとは、直打式(直動式)の動弁機構でバルブクリアランスを調整するための円盤型の薄い金属部品です。
直打式はカム山が直接バルブ側を押す構造で、カムシャフトとバルブの間にシムを挟み、その厚さでクリアランスを変えます。アウターシム式では、逆さにしたコップのような形のタペット(バルブリフター)の上部にくぼみを設け、そこにシムをはめ込みます。シムはカムシャフトと直接接しており、シムそのものがカムの摺動面を兼ねている点が大きな特徴です。
バルブクリアランスは、狭すぎても広すぎても不調の原因になります。狭いと熱膨張したバルブが閉じきらずに圧縮が漏れ、出力が落ちます。広いとバルブのリフト量が減って吸排気効率が下がり、打音も大きくなります。
代表的な採用例はカワサキの空冷Z系エンジンです。1970年代初頭のZ1・Z2から2005年式のZ1000Pまで、空冷Z系のほとんどの車両がアウターシム方式でした。性能を重視したフラッグシップのGPz1100やZ1100Rではインナーシムが採用されています。一方で、ポリスモデルのZ1000Pがアウターシムを続けたのは、ピークパワーよりも整備性や繰り返し調整したときの耐久性を優先したためと考えられます。
参照元:KAWASAKI Z 専門店 PAMS(https://www.pams-japan.com/diary/?p=30512)
整備性ではアウターシムが有利です。アウターシムはタペットの上に載っているため、専用工具でリフターを押し下げたまま保持すれば、カムシャフトを外さずにシムを交換できます。
インナーシムはタペットの内側、バルブステムの上に入っているため、交換のたびにカムシャフトやタペット、カムチェーンテンショナーを取り外す必要があります。クリアランスが規定値から大きく外れている場合は「仮組み→測定」を何度も繰り返すことになります。そのたびにカムホルダーのボルトを脱着するので、シリンダーヘッド側の雌ネジが傷みやすくなります。
性能面ではインナーシムが有利です。アウターシム式はタペット上面を覆う大径のシムを使うため、小径のシムをタペット内側に収めるインナーシム式より重くなります。
また、シムがカムとの摺動面を兼ねているため、リフト量の大きいカムで高回転域のバルブスプリングの追従が悪くなると、カムがアウターシムを掻き出してしまう重大トラブルの可能性があります。
こうした理由から、超高性能エンジンやレーシングエンジンではインナーシムが選ばれる傾向にあります。
シムを何mm刻みで何種類そろえるかは、エンジン側で許容されるクリアランスの幅と直接つながっています。カワサキZ1やゼファーχでは、シムの厚みを0.05mm刻みにしています。そのため規定クリアランスにも幅を持たせており、Z1は吸排気とも0.05〜0.10mmです。
また、0.025mm刻みのシムを使うホンダCBR250Rでは、吸気0.16±0.03mm、排気0.27±0.03mmと許容範囲を狭く設定できています。
刻みを細かくするほど組立時のクリアランスを狙い通りに管理しやすくなりますが、そのぶん品種数が増え、1枚ごとの板厚公差も厳しくなります。自動車エンジン用シムの量産加工では、6μm刻みで101種類、板厚公差±5μm以下に対応した実績もあります。発注時は、品種数と公差をセットで提示するのが基本です。
参照元:Webikeプラス(https://news.webike.net/maintenance/51531/)
参照元:イプロスものづくり|株式会社諏訪機械製作所(https://mono.ipros.com/product/detail/2000793370/)
アウターシムは表面をカムが直接こするため、耐摩耗性と硬度が特に重要です。自動車エンジン用小径シムの材質の一例には、軸受に使われる高炭素クロム軸受鋼のSUJ2材があります。
■一般的なシムプレート材の値について
汎用材の公差はμm単位で管理するエンジン用シムの要求より大きいため、高精度が必要な場合は研磨による仕上げが選択肢になります。最適な材質や熱処理は使用条件によって変わるため、設計段階からメーカーに相談するのが確実です。
参照元:イプロスものづくり|株式会社諏訪機械製作所(https://mono.ipros.com/product/detail/2000793370/)
参照元:有限会社こだま製作所(https://www.kodama-tec.com/case/use/shimplate/003844.html)
シムの加工は、外形を作る工程と、厚み精度を出す研磨工程に分けて考えます。外形加工の主な工法と特徴は次のとおりです。
厚みの仕上げには、両面研磨やラップ研磨を使います。マグネットでワークを固定せず、上下の回転砥石で挟んで研磨する方式なら、非磁性体や難削材にも対応できます。試作や少量生産ではワイヤーカット、中量ではエッチング、1,000枚以上の量産ではプレスと研磨の組み合わせというように、ロットに合わせて工法を選ぶのが基本です。
プレス加工メーカーの中には、タペットシムを含む二輪車部品をラインアップしている企業もあります。
参照元:有限会社こだま製作所(https://www.kodama-tec.com/case/use/shimplate/003844.html)
参照元:イプロスものづくり|株式会社諏訪機械製作所(https://mono.ipros.com/product/detail/2000793370/)
参照元:イプロスものづくり|株式会社三陽製作所(https://mono.ipros.com/product/detail/2000938949/)
まず確認したいのは、エンジン部品の量産実績です。オートバイメーカーと共同開発した実績を持ち、タペットシムやカムスプロケットなどの二輪車部品を扱うプレス加工メーカーがあります。
また、自動車向けにSUJ2製エンジン用シムを量産している研磨加工メーカーもあります。実績のある業界と部品の種類を見れば、要求品質への理解度を判断しやすくなります。
参照元:イプロスものづくり|株式会社三陽製作所(https://mono.ipros.com/product/detail/2000938949/)
参照元:イプロスものづくり|株式会社諏訪機械製作所(https://mono.ipros.com/product/detail/2000793370/)
次に、次の4点を事前に確認しましょう。
対応範囲はメーカーによって大きく異なります。たとえば、板厚±5μm以下・月10万個に対応する研磨加工メーカーもあれば、1枚から数千枚まで・板厚t0.005〜に対応する精密板金メーカーもあります。依頼前に、メーカーごとの対応範囲をチェックしておきましょう。
参照元:イプロスものづくり|株式会社諏訪機械製作所(https://mono.ipros.com/product/detail/2000793370/)
参照元:有限会社こだま製作所(https://www.kodama-tec.com/case/use/shimplate/003844.html)
本サイトでは、おすすめのシム加工業者3社を、対応できる素材の多さで比較。
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アウターシムは、タペット上部にはめ込んでバルブクリアランスを調整する円盤型の部品です。インナーシムより整備性に優れる一方、重量や高回転時の安定性では不利になります。
カムが直接こする部品なので、厚みの刻み、板厚公差、材質・硬度の管理が品質を左右します。量産実績と、必要な精度・品種数・ロットへの対応力を確認したうえで、発注先を選びましょう。
目的別シム加工業者
おすすめ3選
引用元:特注シム製造センター.com(https://www.shim-manufacturing-center.com/)
●機械の分解をせずに調整が可能なC型シムの製作に対応。現場の課題から来る細かい要求にも、ミクロン単位の精度で製作対応可能。
●独自の生産管理システムで最短30分で見積もり。バリを極限まで減らした「バリレス精密プレス」によってバリ取り工程も短縮。
引用元:ハヤシ(https://www.hayashinet.co.jp/shim/)
●300点以上のラインナップから、「幅・長さ・厚み」などの条件で必要な規格品シムを検索・注文できる。
●フリーサイズ(四角・リング)の取り扱いもあり。希望のサイズで見積もり・カットしてもらえ、必要なシムを手軽に調達できる。
引用元:岩田製作所(https://www.iwata-fa.jp/html/option/sm28.html)
●JIS Q 9100認証を取得。エアバスやロールスロイスをはじめとする、世界中の航空宇宙業界でも採用。(※)
●「アルミ」「真鍮」「SUS」「樹脂」の4種を在庫。加工まで一貫して対応しており、材料や製品のサンプル提供も可能。